「きゃははははははっ。 旋律ですよー」
そう言って希実香は大きく空に手をかざす。なぜかそのひらには秤がのっており天を指していた。
「はははははは……バカかお前っなんで秤なんて持ってるんだよ」
「きゃはははは、神様の重さを量るんです! だから秤をもってきました!」
そう言って希実香は秤を大空に掲げる。
「さぁ、神様、天秤の片方のお乗りくださいませっっ。もう片方にはすでに旋律が乗っております」
「旋律ですっっ、私は旋律担当、そして救世主様が奇跡担当ですっ」
「さぁ、神様、ここです。 この天秤にお乗り下さいませっっ」
「はははは、どんな組み合わせだよ……なんで奇跡と旋律なんだよ」
「そんな事ありませんよー。 神様は旋律ですって!」
「神様は旋律なんですよー」
「私、今分かりました! 神様は旋律ですよー」
「お前なぁ……救世主差し置いて、勝手な事言うな」
「さぁ、もっとどんどん上に登っていきましょうっ」
すでに世界に存在するどんな建物よりも高くそびえ立っていた。
これじゃ、まるでバベルの塔。
こんな奇跡の使い方したら、さすがに神様に怒られるんじゃねぇか? とか思った。
「おいおい、これじゃまるでバベルの塔だぞ」
「それか、イカロスですよっ」
「イカロス?」
「はいっ、太陽を目指して蝋で固めた翼で飛び立つ人の話です」
「最後どうなんだよ」
「落下して死亡しますっきゃはははははははっ」
「イカロスバカだから、太陽に近づいたら、蝋の羽根溶けちゃう罠に気が付かなかったんですよー」
「でも、私達は負けねぇぞ! こっちには救世主様もいるしなっ」
「どんどん空目指してゆきますよ!」
「知らんぞ。 お前、本当に神様に殺されるぞ」
「殺せるもんならとっと殺せ! この野郎ぅ!」
「だって、だって、私思うんですよぉ」
「神様がいたとしたら、神様っていつでもお空から私達を見ているんですよっ」
「私達のすべてを見て、すべてを知っている……」
「そして生暖かい目で見下しているヤツなんです。 あいつは嫌なヤツですっっ」
「お前、そんな事言ったら洒落にならないって……」
「きゃははははは……」
希実香の警棒もさすがにめきめきに曲がっている。
でもうれしそうに笑っている。
希実香はとてもうれしそうに破壊している。
破壊と旋律。
警棒と音楽。
「これは音楽だっっ」
「あはははははっっ」
もう、希実香の警棒はぶっ壊れて先がない、なのに音は続く。綺麗な旋律は止まない。
ボクらを、この屋上を、美しい旋律がつつむ。
「ははははは……」
音を奏でるたびに奇跡が続く。
※サンプルシナリオは製品より一部抜粋編集してあります。ご了承下さい。 |